2024年度から本格的にフィギャーノートを導入した東京都内のある小学校。 そこで音楽の授業を担当しているのが、若き音楽専科の先生・井上こころ先生です。
音大卒業後、思いがけず飛び込んだ小学校教育の現場。 フィギャーノートとの出会いや、子どもたちと過ごす日々、そして音楽へのまっすぐな想いを語ってくださいました。

思いがけず飛び込んだ小学校の世界
Q:音大卒業後、どんな経緯で小学校の先生になったのですか?
井上:音大の4年生の秋に教育実習へ行き、ちょうど卒業を控えた時期に進路を考えていました。そんな中で、教育実習でお世話になった先生が、私のことをよく見てくださっていて、小学校の音楽専科の仕事を紹介してくださったんです。
それでとても自然な流れで決まり、「やってみよう!」と、産休代替の先生として働くことになりました。
実際に勤務してみると、3〜6年生の音楽を担当することになりました。初めての経験ばかりでとても慌ただしい毎日でしたが、とても学びの多いスタートでした。
現在の学校での勤務と担当学年
Q:現在の小学校にはどんなきっかけで入られたんですか?
井上:産休代替を終え、東京都の講師登録をして、現在の小学校にご縁がありました。
今は時間講師として働いていますが、しっかり授業コマを持たせてもらっていて、とてもありがたい環境です。昨年は1〜3年生、今年は2、3年生を担当しています。
フィギャーノートとの出会い
Q:どんなきっかけでフィギャーノートを知りましたか?
井上:今の学校に来たタイミングで、小学校としてフィギャーノートの導入することになり、昨年夏に学校で他の先生とともに研修を受けました。
正直、子どもたちには授業の中でどうやってフィギャーノートを紹介しようかな…と悩みました。「特別扱いされてる」と思ってほしくないし、「できない子のため」と捉えられるのも良くないと思ったので。
そこで、まずは五線譜の楽譜を全員に配ってから、「これ、ちょっと見てみて〜」とモニターにフィギャーノートを映して見せたんです。
すると、「わ〜!色がついてる!」「かわいい!」と子どもたちは大盛り上がり(笑)。
「これも同じ曲の楽譜だよ。欲しい人は前に置いておくから、自由に取ってね」と伝えたら、何人かの子が持っていきました。
ピアノを習っている子も「こっちも楽しそう!」とフィギャーノートの楽譜を使ってくれる子もいて。思ったよりずっと自然に受け入れてくれてホッとしました。
子どもたちの変化に驚いた場面
Q:実際使ってみてどうでしたか?
井上: 2、3年生の音楽の授業は鍵盤ハーモニカやリコーダーを使うんですけど、特に3年生から始まるリコーダーは、五線譜だと苦手意識が出やすいです。
ある男の子は、楽譜を見るだけで目を閉じて、「受け付けないよ~、見ないよ~」という様子を見せていたのですが、フィギャーノートを見せたらスッと姿勢が変わって。初めて指を動かして、音を出せるようになったんです。
「見てすぐにわかる」「同じ色=同じ音」という直感的な理解ができるのが、フィギャーノートのいいところですね。
リコーダーの指の形も、塗りつぶされたアイコンで視覚的に理解できるので、初めての子にも本当に分かりやすいと思います。
フィギャーノートを選ぶ子どもたち
Q:クラス内でどれくらいの子どもたちがフィギャーノートを使っていますか?
井上: クラスには30〜35人いますが、そのうち半分くらいはフィギャーノートを手に取ります。最初から使う子もいれば、途中で手に取る子も。両方持っていく子もいます。
逆に「もう大丈夫!」と五線譜だけで吹けるようになる子もいて、それぞれのペースで自然に選んでいます。
「できないから使う」ではなく、「楽しいから使ってみようかな」という空気があるのは、とても良いなと感じています。
↓音楽教室にはフィギャーノートのリコーダー譜面が大きく掲示してありました。

音楽の入り口はひとつじゃない
Q:ずっと五線譜で音楽を学んできた井上先生から見て、フィギャーノートに抵抗はありませんでしたか?
井上: 私が目指しているのは、「誰でも楽しめる音楽の授業」。
成績をつけることには正直少しモヤモヤもあります。でも、それ以上に「音楽って楽しいんだ!」と思ってもらえる授業を大切にしています。
私自身、五線譜を読むのが苦手だった時期がありました。ピアノの先生に「早く覚えて!」と怒られてしまった経験もあるので、読めないつらさはすごく共感できます。
フィギャーノートのようなツールがあることで、音楽の入り口が広がるのはとても嬉しいです。
子どもたちに伝えたいこと
Q:今後、こんな授業をしていきたい、音楽を通して子どもたちに伝えたいことはありますか?
井上: 実は私自身、子どもの頃からクラシック一辺倒ではなくて。カラオケや歌が大好きな子どもでした。
声楽を学ぶ中でも、ポップスやミュージカルが好きで、そういうスタイルも大切にしてきました。
音大では声楽コースに進みましたが、ポップス系の授業も選べる環境だったので、クラシックとポップスの両方盛りだくさんに学んできた!という感じです。
だからこそ、「音楽って、いろんな入り口があっていいよね」と思えるんです。
これからも、音楽を楽しむきっかけをたくさん作っていきたいです。
これからのフィギャーノートに期待すること
Q:今後、はぴみゅーずやフィギャーノートに望むことはありますか?
井上: もっと簡単な練習フレーズや教材があったら、1年生など小さい子にも取り入れやすいなと感じています。
いつか自分でも作譜にチャレンジしてみたいな…とも思っていて。まずは簡単なところから、取り組んでいけたら嬉しいですね。
井上先生、ありがとうございました!
音楽を「楽しめる手段」として真剣に考え、工夫しながら届けている井上先生。これからの子どもたちと一緒に、楽しい音の世界を広げていってください!
【聞き手/編集:沖野亜希】